現在の世界観と世界平和戦略

いま世の中はなかなか大変なことになりかけている真っただ中。ISの台頭、イギリスのEU離脱問題、トランプ大統領問題など。世界全体が革命前夜の様相を呈していますね。

日本での炎上騒動みていたりしても、そろそろ民主主義を根本的に見直さないといけないのではなかろうかと思ったり思わなかったりするわけですが、まあどうなろうが世界的な「戦争」と「飢餓」を回避できれば御の字ではなかろうかと思うのです。

中東がまったく平定される気配がなかったり、アフリカでも武装勢力なんかがけっこう活発であったりして局所的には平和とは言い切れない状況ではあるのですが、全体的にみれば何百万何千万単位の人々が武装して殺しあうみたいな大規模な戦闘が明日明後日に起こる気配はないので、歴史的にみればかなり平和な時代と言えると思います。


いまこの平和な時代を作っているのは、アメリカでしょう。中東への対応なので色々と評判が悪かったりもするアメリカですが、さりとて真向からアメリカに刃向かって勝てるほどの武力を持っている勢力はなく、仮に勝てるとしても甚大な損害を被ることは明らかなので、アメリカが世界の警察のような立ち振る舞いをしている今の世界において、ちょっとやんちゃしてみようと思う合理的な理由がありません。

そのためアメリカが健全なうちは第3次世界大戦のようなものは起こらないでしょう。

これは逆に言うと、アメリカこそが現在の世界平和における最大のリスク要因ということになります。上述したような今の構造では、アメリカが機能不全に陥っただけで均衡が破れてしまいます。

いままでの歴史をふりかえってみると、一国がトップに君臨しつづけたためしなどないので、アメリカもいつかダメになる可能性はかなり高いです。そのため、アメリカ一国の下に世界平和がぶらさがっているような状態はかなり危険な状態であるといえます。たとえばトランプ氏が大統領になっただけでアメリカの戦略が変わってしまうかもしれませんし、アメリカが大恐慌に突入して軍事予算が捻出できなくなってしまったりするかもしれません。

そのため、この構造は変えていく必要があります。それも永久に持続可能なモデルにするべきです。


さて、アメリカによる世界警察モデルの代わりになるものですが、「自由経済により国家間の相互依存関係を密にする」というのが、世界平和のための一番現実的な戦略としてあげられます。継続的に戦争を抑止する構造として、今のところこれ以外はちょっと思いつかない。

戦争に勝っても負けても結果として経済状況が悪化する、という仕組みが作り上げられれば、戦争に対してのネガティブ要因が常に働くことになるので、戦争を行う合理的な理由が少なくなるはずです。


この国家間での自由経済を進めていく枠組みとしては、TPPなどはじめ、大まかにはグローバリゼーションという呼び名ですでに昨今話題ですが、先進国に住む人々にとっては雇用の流出など直接的には不利な要素が多いため、批判的な声もかなり大きいです。

特にこのモデルを昔から推進してきたEUですが、イギリスで国民投票にかけた結果離脱派多数という結果になってしまいました。


世界平和のために全世界を巻き込んだ自由経済を構築するためには、それによって不利な面が大きい先進国の譲歩が必要不可欠です。自分たちの富を後進国に与えなければなりません。

アニメ「東のエデン」でも有名な「ノブレスオブリージュ」というフランスの言葉があります。富を持つには相応の責任が伴う、という感じの言葉です。この考え方を現代に適用しようとすると、「階級のなくなった今の社会で何を言ってるんだ」という批判的な反応が多いようなのですが、世界に目を向けてみれば先進国と発展途上国との間には大きな経済格差がありますし、「みんな平等だし階級なんてないです」といってしまうのは現実に即していないというか、単に現状認識として間違ってるでしょう。

このノブレスオブリージュ自体は、そう立ち振る舞わなければならないといったものではなく、富める者に自然発生してくるものだと思います。今の文脈で言えば、自分の富を保持し続けるために、世界平和を維持していくには発展途上国への投資が必要そうだというのは、難しい発想ではないです。



さて、ここまではいいと思うのですが、ここからが困ってしまいます。話が国単位の関係になってくると、どうもこのノブレスオブリージュが上手く働かないようなのです。

イギリスのEU離脱問題をみてみると、どうも裕福層は残留を支持し、そうでない人は離脱を支持すた、という傾向のようです。すごくシンプルに考えると、裕福層にはノブレスオブリージュが働いて、貧困層には働いていない、というように見えます。

これは、本来裕福層であるはずの先進国の中で、さらに裕福層と貧困層が存在するという二重構造になってしまっているのが原因だと思います。現実には、先進国内の貧困層の生活レベルは発展途上国の平均よりかなり高いはずなのですが、経済格差というものは社会内部で相対的に認知されるため、生活レベルが高いけど社会的立場は貧困層という状況が生まれてしまい、このためにノブレスオブリージュが働かないと考えられます。


格差というものが相対的な価値判断でしかない以上、国家内部での格差問題を解消するのは容易なことではありません。経済が良くなってみんなでお金持ちになったとしても、そこには必ず格差が存在するからです。この国家内部での格差を解消するには国がお給料を全労働者に一律支給するしかないですが、そのモデルで経済を発展させていくのはさらに困難です。


さらに悪いことに、テレビやインターネットなどのメディアの登場により、民主主義が本来の意味で正しく機能し始めてしまいました。もともと直接的には一部の裕福層によって啓蒙・運営されていた政治に対して、一般的な国民が自分たちで考え、そして政策に対して直接的に影響を及ぼしてしまうことが可能になってきました。今回のイギリスの国民投票の例でいえば、EUが主導した難民受け入れは先進国としての責任を果たそうという行為ですが、それに対する反発の声がEU離脱という形でダイレクトに反映されてしまいました。(いまのところまだ政策として確定はしていないですが)


というところで、じゃあどうするのかというと手詰まり感がありますね。やっぱり戦争とかになったらマジ大変そうですし、食べ物も少なくなりますし、人同士が殺しあってありえない単位でばったばったと死んでしまいますし、なんとか戦争が起こらない仕組みが出来上がってほしいのですがね。

個人的には、東浩紀さんの一般意思2.0に書かれていた、「国民同士がコミュニケーションをとらなければ投票によって正しい結論が導かれる」というところに一抹の可能性はありそうな感じはします。「自分たち」で考えるのではなく、あらゆる雑音をシャットアウトして皆が「自分」で考えて結論を出すことが出来れば、戦争のない世界に向かっていくことができるのかもしれません。




驚きの長文になりました