学校にエアコンが設置されない理由を考える

今年は記録的な熱波に見舞われていて熱中症がクローズアップされています。

www.nikkei.com

それにともなって小学校にエアコンが設置されてない問題がネット上では話題ですが、行政側はなかなか重い腰状態のようで、命よりお金なのかと批判されています。


なんで腰が重いのか、考えられる理由をつらつらと書いてみます。


まず考えなければいけないのは学校へのエアコン設置には肌感覚以上にお金がかかるということです。1校あたりだいたい5000万円くらいかかるので、街単位で公立学校に一律設置を行うと数十億〜数百億円のお金が必要になります。

さらにこれより問題なのが運用時の電気代や補修費などで、エアコンのランニングコストが1校月あたり数百万円かかり、せっかくエアコンを設置しても稼働出来ない学校も多いようです。ただ、このランニングコストについては保護者だけでも年間5000円程度の負担で済むので、市民全体で面倒見ますよということならばさらに負担は少なさそうで、どちらかというと市民から徴税して予算を取るのが大変というところでしょうか。けっきょく「エアコン設置しろ→電気代は市民に負担していただきます→無駄を削ってからだ」というお決まりの議論が始まるのは明らかなので。


また、エアコン設置に腰が重い理由として、統計的にみてエアコン設置による学生の熱中症死亡事故に対する効果は見込めないということが考えられます。

www.mhlw.go.jp


このように、10代が熱中症で亡くなるのは近年でも年間で数人と十分少ないため、先の千葉市長も学校のエアコン設置の有無で熱中症に対して統計的有意差がないと言っていたように、エアコン設置ではこれ以上改善することは出来ないでしょう。

さらに熱中症が危険視されるくらい夏場の暑い時期に生徒が教室で授業を受けている時間は、梅雨明けから夏休みの間までと考えると10日間程度であり、また、熱中症が問題となるケースがほとんど屋外活動であることも重い腰の原因だと思います。熱中症の発症条件には個人差が大きくどうしても防ぎきれないので、どちらかというと教職員の熱中症に対する知識の向上を行い対処療法を徹底した方が亡くなってしまう数人に対しては効果があるんじゃないかと思います。



個人的には昭和じゃないし(平成も終わろうとしているっ)、これから少子高齢化で子どもたちは本当に大切な存在になっていくので、生徒が集まる場所にはエアコンつけて良質な教育環境にしたほうがいいと思いますが、「人命とお金とどっちが大切なんだ!」という感じの言説は明らかに数字と齟齬があるので、あんまりよくないんじゃないかなと思ってたりします。あとは、やっぱり我々大人がこのコストを負担するのが当然なので、ゴネないことが大切でしょうか。