あられもない祈り / 島本理生 感想

あられもない祈りを読んだ。面白かった。


感想(ネタバレ風味あり)


恋愛をテーマにした小説。恋とか愛とかは僕にはよく分からないので共感出来る出来ないとかもよく分からないのだけど、まあとにかく面白かった。若干死にたい気分にもなった。この小説は恋愛そのものをテーマとして描かれている。白馬の王子様と実際に付き合ってみたら~、みたいな話かもしれない。


この物語の主人公は20代OLで、冒頭から白馬の王子様的な人が出てくる。しかし両親とかお互いの恋人とか生い立ちとかの外部の存在によりなかなか結ばれることが出来ない。それでもなんやかんや色々な事が起こって、1つずつ外部を排除していって物語終盤にようやく2人は結ばれる。と思ったらものの数ページで破局する。


これは外部に原因を求める否定神学システムそのものであり、つまりこの小説は恋愛(恋愛小説)とは否定神学システムであると言っている。自分がいまいち幸せになれてない理由を外部(母親、恋人)に求める方が楽なのだ。そのために「あなた」という非常にぼんやりしてよく分からない人物との幸せを空想する。そして結ばれて初めてそれがただの空想だったことに気がつく。この小説は恋愛感情とはそういうものだと言っていて、これを読んで恋愛小説が書けなくなったという西加奈子さんの感想もうなずける。恋愛感情というのは人の根底にあると思うから、なるほどその部分さえも否定神学システムで出来ているならば、僕たちはそれから逃れられるはずもない。


実際のところ、否定神学批判批判というのはある。たしかに否定神学は理不尽な暴力装置だけど、僕たち人間はそれに頼ってなんとかギリギリ自分が幸せであると感じているのかもしれない。たとえ恋人や母親との関係を崩壊させたすえにものの数ページで破局することが分かっていたとしても。