【感想】ゆるく考える / 東浩紀

僕は「柚木涼香東浩紀動物化してもいいですか?(はぁと)」を観てからの東浩紀ファンなのだ。

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と、何か気持ちの悪い感じの宣言から始まってみる。


東浩紀はもともと哲学(フランス現代思想)の研究者で、博士取得後は「動物化するポストモダン」など出して新しい現代批評の第一人者になっていった人だ。


10年前、Google/ニコニコ動画/2ch/Twitter/Ustream、そのようなインターネットからばんばん生まれてくる新しい文化やや社会や生き方の形、価値観。今ではゼロ年代の思想と呼ばれているけど、僕は当時そのようなものにすっかりハマりきっていたのだが、それらの新しい文化を支えるための理論を語っていたのが東浩紀だった。もちろんホリエモンとかひろゆきとか、当時のニコ論壇は他にも斬新な価値観を提示する人はいたんだけど、自分の好みに合ったというか、西洋哲学のロジックを使ってインターネットを語る形で一番射程の広そうな事を話ていたのが東浩紀だったのだ。


そんなことから彼の対談動画を観たり著書を読み漁って心躍らせていたりしていたのが、ゼロ年代の記憶だ。例えば僕は今でも「らき☆すた」が好きっていうか神だと思ってるんだけど、東浩紀なしにはらき☆すたを神だと思うことはなかっただろう。僕は大学は情報系だったけどなぜか卒業研究でフランス現代思想を扱ったりしていて、もともとフランス現代思想にかなり影響を受けていたのだが、批評家東浩紀はなんとらき☆すたとフランス現代思想とインターネット文化とを、いろいろな言葉を使って繋げて見せたのだ。それはなかなか感動的な体験だった。それからも、ゼロ年代に抱いていたインターネットへの希望と、それ以降のテン年代のインターネットへの失望と、僕はそういう社会の移り変わりを基本的には東浩紀を軸にして考えてきた。そしておそらくそういう人はたくさんいるんじゃないかと思う。


「ゆるく考える」はそんな東浩紀さんのエッセイ集。期間としては2008年~2018年のものが収まっているので、ゼロ年代の熱量とテン年代の憂鬱の時期が一通り収まっている。また、エッセイ集といっても半分以上が1ページ2段構成になっていたりしてなかなか濃密だ。

ゆるく考える

ゆるく考える


この本は東浩紀ファンにとっては完全保存版のファンブックだと思う。東浩紀の理論や思想が詳細に語られる本ではないけど、東浩紀のこの10年の歴史と人間性が記録として詰まっている。そして、この本が10代とかの若い世代に届くといいなと思う。これを面白いという子たちはたくさんいるに違いない。