アイリッシュマン

アイリッシュマンというマフィア映画を観た。面白かった。ややネタバレあり。

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1950年代~70年代のアメリカのマフィア界を舞台にした話。トラックの運転手をしていた主人公が、ジミーホッファーというこの時代に実在した超大物の側近になって、あれやこれやの暗い活動をしていくというストーリー。3時間半程度の長編映画だが、全編通してスリリングな銃撃戦や暗殺シーンといったものはなく、物語は淡々と語られていく。


この映画は3時間半のうちの3時間くらいはマフィアでの様々な活動が描かれている。組織の中で政治争いをしたり、超大物人物を殺したり。しかし、この物語の特筆すべきところは、1980年代以降のこと、マフィアだった主人公の老後が描かれていることだ。


一人で動けなくなり介護施設で暮らしている年老いた主人公。当時のマフィアの関係者たちはみな年をとって死んでしまった世界。主人公は自分の世話をしてくれる若い介護士に、自分が殺した超大物の写真を見せる。この超大物のことを若い介護士は知らない。たった10年20年たつだけで、自分たちが起こして世間を騒がせた大事件は何もかもが忘れ去られている。その虚無感。


この映画が3時間半という長尺になっていること自体もおそらく演出になっていて、視聴者もその虚しさを共感する。3時間延々と見せられてきた様々なマフィアのドラマ、最後の最後に唐突にそれらの何もかもが忘れ去られ無価値になった世界に場面転換する。この3時間半見てきたものはなんだったのか、と。それは人生の最後に感じる事なのかもしれない。そういうことを考えさせられる映画だった。