東浩紀さんの選挙を棄権しよって話

東浩紀さんが選挙の積極的棄権の話で、これがまた大炎上しているわけです。
www.huffingtonpost.jp

炎上の内容としては、

  • 先人が命がけで獲得した選挙権を放棄するなんてけしからん
  • 棄権するということは全て投げ出して関与しないのと同じ
  • 馬鹿

みたいな感じ。


炎上する雰囲気もわかるのですが、すこし擁護してみます。主に2点。

解散権の乱用は批判されるべき

まず積極的棄権の直接的な動機としては、「解散権の乱用」を批判する必要があるということです。

日本の選挙って、公示から投票日までものすごく短期間しかないので熟議からはかけ離れたものです。ポピュリズム直接民主主義がよく批判されているように、選挙をやって多数決で物事を決めるということ自体が、あまり良いことではありません。もちろん政治に民意を反映させるために今は選挙という仕組みに頼らざるを得ないのですが、だからといって政局を打破するためにカジュアルに行っていいものではないはずです。

また、ひとたび選挙になると個人個人の立場の違いが明確にされ、国民の間に例えば右と左に分かれての罵り合いが生まれます。これが本当によくなくて、考え方の違う人同士が色々とグレーな感じにしながら集団生活を送っているのが社会なので、選挙のようにグレーだったものをクリアに白黒はっきり分けるようなイベントは、出来るだけ行うべきではないのです。

そのため、解散権を制限する方向に持っていく必要がありますが、少なくとも今回の衆議院選でその立場を示すために積極的棄権を採用するというのは、それほどおかしな話ではないと思います。


与えられている枠組みの中では社会はよくならないとこまで来ている

社会をよくしたいというのは多くの人の思いですが、その手段としての選挙にどこまでの実効性があるのかという話です。

たとえば、現代日本社会において最大の問題の1つは、少子高齢化に伴う社会保障制度の崩壊です。年金とか数十年後は絶対無理と言われて久しいですが、特段対策も取らず、このままどこまでいけるかなチキンレースの様相を呈しています。

将来の社会保障をある程度機能させるには、社会保障自体を再設計して規模縮小していくことが必要です。つまり、数十年後のために今の社会保障を縮小する必要があるということです。

ここで問題になるのは(よく言われていることですが)、世代間人口格差問題です。数十年後に社会保障が崩壊して困るのは、せいぜい今の40代以下の人達ですが、この人たちは選挙においてはどう頑張っても少数派になるため、医療費を減らそう、年金とか全部やめてBIにしよう、といった政策はまず通りません。

これは、若者が投票率頑張ればなんとかなるレベルを超えていて、現行の選挙制度に乗っている限りは構造的に解決不可能な問題です。

そのため、数十年後の日本社会のための政治を獲得するためには、どうしてもその場限りの意思決定になってしまう現行の選挙制度を変える必要があり、ルールブレイカーの登場が必要なのです。


ということで上述したように、今のルールに乗っかっている限りはダメだと仮定するならば、まずそのルールには乗らないと表明するための積極的棄権にはそれなりに大義はあるのかなぁと思います。


これらの内容に近いことはニコ生でご本人が言っていたので、暇だったら見てみると面白いかもしれません。(・・・9時間ありますけど)
live.nicovideo.jp