夜は短し歩けよ乙女

こちら、2006年に出版された小説。および、それを原作とした2017年公開のアニメーション映画。

夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)

夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)

kurokaminootome.com


昨今のこんなご時世だから、映画を見返してみた。


黒髪の女の子が、夜の街で酒を飲みまくり、古本市で本を買い、学園祭で演劇に飛び入り出演、という感じで夜の街の三密空間を渡り歩く物語。そして恋する主人公が黒髪の女の子を追いかけて少しずれた三密空間を渡り歩く。


三密が禁止された世の中になった今からみるとなかなか思うところがある。三密というのは文化そのものだと言ってもいいと思える。そして、色々な三密を部外者として観光する黒髪の女の子。


まあコロナ禍がこの先どうなるのかはよく分からないけど、話題の「新しい生活様式」を考える際には、三密や観光を大切を文化として捉えるという視点もあるといいのかなと思う。


ところで、この物語は全て一夜に起こった出来事であるのだが、夜が深まると共に三密空間だらけの街に風邪が流行して街から人がいなくなる。最初に風邪をひいて孤独に寝込んでいたおじいちゃん。そんなおじいちゃんをお見舞いした黒髪の女の子は、おじいちゃんの風邪が街中に広がっているということはおじいちゃんに人の縁があるということなのだ、と言って元気づける。


つまり「風邪」は「縁」のメタファーになっている。風邪の広がりを必死に食い止めようとしているコロナの世界で、それをどう考えるかも難しい話である。