劇場版 リズと青い鳥の感想

リズと青い鳥観てきました。

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僕はユーフォに関しては原作の大ファンでもあるので、若干うがった見方もしてしまうところもあるのですが、簡単に感想。

良かった点


山田監督のセンスが存分に発揮された世界観はやっぱり独特の美しさがありますね。まあこれは良し悪しで、本来の作品世界を山田監督が食ってしまうという面もあるけど、今回は劇中にメルヘンな絵本世界が出てきたりもするので、山田監督の演出はハマっていたように思います。


この映画の劇中劇であるリズと青い鳥という世界描写が素晴らしくさすが山田監督といったところでした。絵本世界と現実とを行ったり来たりする演出は絶妙でしたね。ここは原作よりも良かったように思います。


あと、原作では新入生が入ってきて登場人物が多くなりすぎているため、2年生編から読み始めるのはほとんど不可能なのですが、劇場版では主人公の黄前久美子を含めた無駄なキャラクターをばっさりカットして新3年生組+梨々花という最小構成にしたのが非常に良くて、初見に対してもわかりやすい作品に仕上がっていたと思います。



良くなかった点


心理描写は原作と比べるとかなり浅くなっています。たとえば、麗奈のみぞれに対する「本気だしてないんじゃないですか」っていう台詞は唐突感がぬぐえません。原作だと、これは麗奈の葛藤の末に絞り出された台詞なのです。また、これに伴ってみぞれがなぜ本気を出せていないのかという状況説明も浅くなってしまっているので、最大の見せ場であるオーボエソロシーンが軽くなってしまっていますね。


他にも、希美の「私を軽蔑するでしょ」っていう台詞もイマイチなんでなのかよく分からない感じですね。これは希美のみぞれに対する嫉妬心を見せるシーンが少なすぎるのが原因だと思います。原作だとかなり時間をかけて描いているところでした。


まあ希美とみぞれの心理描写については、原作だと黄前相談所の独壇場であり、黄前久美子が出てこないという劇場版の構成上では心理描写シーンを全てオリジナルで作り直す必要があったのがつらいところだったかもしれません。


あと、これは山田監督が作ると聞いて観る前から心配していたところで、実際観てみてまあやっぱりこうなるよねって思ったところなのですが、百合という方法論を用いて、希美とみぞれの関係を記号的に処理しようとしてしまっているところが、原作ファンとしてはもにょるところです。


原作でみぞれが希美に対して抱いている強烈な執着はなかなかよく分からない謎の感情なのですが、劇場版ではそれを恋愛感情にデフォルメしています。まあこれは良し悪しではあるのですが、百合という記号に落とした分だけストーリーが分かりやすくなっているのですが、原作の持つ人間関係の複雑さというか深みのようなものは消えてしまいますね。



ということで、劇場版観て面白かった方は、ぜひ原作も読んでみてください!きっと面白いんじゃないかと思います。