サッカー日本代表 パラグアイ戦感想

4-2で西野ジャパン初勝利。やーひとまずほっとした。


乾の同点ゴールは、僕が本当にこの3年間待ち望んでいたものでした。遅攻局面(相手のDFが完全に整っている状態)でDFラインからビルドアップしてボランチ経由して中央バイタルを完全に攻略してのゴール。これはハルリジャパンではありえなかったゴールなんですけど、やっぱこれが一番テンション上がるよね。本当に良いゴールでした。


西野ジャパンになってからこれまでの2試合もそこまで悪くなかったのですが、

大迫 → 岡崎
宇佐美 → 乾

この2枚の違いが決定的だったと思います。西野さんが発言してなぜか批判されてた決定力というものをこの2枚代えがもたらしてくれたと思います。


岡崎はやっぱりすごい選手だということを再認識。乾の同点ゴールシーン、あのスペースに岡崎も岡崎もマークするDFもいなくてぽっかり空いていたのが素晴らしいです。これは岡崎が試合を通して裏を狙い続けた結果として、乾が突っ込んでくるあの場面でも相手のDFが岡崎への対応のために1〜2m下がったポジションを取っていたといえます。もちろん一概にそうとは言えないことは大前提として、大迫は下がってあのスペースでもらいたがるので、FWが大迫だったらあそこには相手DFが密集していて乾のゴールはなかったかもしれません。4-3-3でポゼッションスタイルの場合、ワントップの選手は非常に重要です。2014年、スペインがポストプレイヤータイプのFWをワントップに据えて2連敗でグループリーグ敗退しましたが、ワントップをビジャに代えた第3戦は見違えるような内容のサッカーになりました。チーム全体としてパスが小気味よく回って2列目の選手がエリア内にどんどん侵入していけるような時は、一見何もしてないように見えるワントップの選手がすごいのです。相手のDFラインをコントロール出来るワントップというのはなかなか貴重で、日本だと柳沢や前田が上手かったです。今だと岡崎ですね。


それと左サイドから宇佐美がいなくなったことで中盤が本当にダイナミックになりました。前半の香川のスルーパスに乾が反応した決定的なシーン、あの斜めの動きに象徴されるようなプレーが宇佐美にはないんですよね。


あとは誰が出てもチームとして今日くらいのクオリティは出せると思うので、残りの1週間、し烈なチーム内競争を繰り広げて最高の状態でコロンビア戦を迎えてほしい。


まあ僕は単に香川ファンなので、香川にスタメンを勝ち取ってほしいですけどね。

サッカー日本代表 スイス戦感想

テストマッチとしては申し分ない相手だったスイス代表。個人の能力と組織力が高いレベルでバランスした理想的なチームでした。スイスというチームはザックジャパンが目指していたところに近くて、日本代表は2014年のたった一度の失敗で諦めずにこの路線を突きつめていくべきだったと思います。そうすれば直前の解任劇でこんなゴタゴタになってしまうこともなかったでしょう。ハリルを登用した人事はめちゃくちゃ反省してほしい。


試合ですが、そのスイスのホームに乗り込んでの試合だったのである程度やられるのはしょうがないですが、バイタルでフリーで前を向かれたりとか、サイドを攻略されたりとか、たまに一発ロングパスで一気にシュートにもっていかれたりとか、スイスの変幻自在の攻撃になかなか対応するのが難しい試合でした。


特に日本は中盤でパスではなくドリブルでも突破出来るチームに弱くて、これは日本のフィジカルの弱さもあって、しっかり人数かけて潰しにいけてるにドリブルでかわされてしまって一気に前を向かれてしまうシーンが目立ちました。それでも本当に決定的なシーンは作らせなかったので、スイス相手によく守ったという見方も出来るでしょうか。


ポジティブだった面としては、やはり大島はかなりいけそうです。中盤のスペースで前を向いて受けるのが非常に上手くて、そこからの展開力も優れているので大島が前を向いたときはもっともチャンスの香りがしました。この大島が良いコンディションで本番を迎えられるかどうかは大きそうです。


あとは長谷部があのチーム相手にフル出場問題なかったこと。酒井宏樹の怪我も大丈夫そうだったところもよかったでしょうか。4-3-3なら酒井宏樹は使いたい。


チームとしてもスイスを相手にしてもそれなりに攻撃の形は作れています。


ネガティブな面としてはやっぱり宇佐美がけっこう厳しいですね。とにかくひたすら足元でボールを要求して、ボールが出てこなくて天を仰ぐみたいなシーンのオンパレードなので、あれだと厳しいんですよね。


なので左サイドはポジショニングの上手い香川か縦のスペースを狙える岡崎の方が良いと思います。もしくは原口左で宇佐美右というクラブチームで結果を出している形でしょうか。宇佐美は右サイドにして縦へのプレーを強制すると上手く動けるのかもしれません。


4-3-3にするならやはり久保か浅野は入れたほうがよかったですね。このチームは相手のDFラインの背後のスペースを狙える選手がいないのが問題で、相手のDFラインに対してスプリント勝負を仕掛けられる選手が控まで見渡してもコンディション不明な岡崎と、ワントップのバックアップとしてサイドでは使いづらい武藤しかいないのが厳しいです。


次のパラグアイ戦では左で乾が先発するかもしれません。ただ日本代表にドリブラータイプの乾がハマったことがいままでないので、それでどうなるかですね。この試合では宇佐美に比べれば乾が入ってからの方が攻撃が活性化していたので、パラグアイ戦で乾を見て左サイドをどうするのかがしっくり決まるといいのですが。


西野監督にとっては宇佐美は思い入れのある選手だと思うので、この宇佐美をなんとか出来るかがオフェンス面でのポイントだと思います。


あとは、大迫のコンディションが悪そうでした。逆に武藤はなかなか動けてそうなので、どちらを使うかは西野監督の頭のいたいところでしょうか。とにかく時間がないのでそろそろレギュラーを固定して連携を深めていかなければなりません。


本田はやはり及第点。大島を前にいかせて自分が大島の後ろをカバーしたり、宇佐美を中央にいかせて左サイドに開くとかいろいろ考えてやってそうな感じはうけましたし、中盤のリンクマンとしては仕事は果たしていました。ただとにかく宇佐美があれで左サイドに何の動きもない状況だとパスコースもないし厳しい感じもしました。


ゲームメークは大島がやってくれるので、より危険なエリアでのプレーを好む香川も先発で見てみたいです。


もっと根本的には「え、4-3-3でやるの?」っていうところもいただけないところです。僕囲碁好きなんですけど、囲碁だとたとえ悪手だろうととにかく一度打ってしまった手を生かしていくという考え方があるのですが、ガーナ戦で3-6-1をやってしまった以上は、そしておそらくメンバー選考も3-6-1をベースにやってしまった以上は、3-6-1でいくのがベストだったと思います。


とにもかくにも、スイスと試合出来たことは非常によかったと思います。グループリーグも強豪揃いですが、スイスほど完成されたチームはいないと思うので、このプレースピードに少しでも触れられたのはよかった。

トマトとブロッコリのパスタつくった

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  1. トマトを細かく切る
  2. ガーリックオイルを作る
  3. トマトをフライパンに投入して油となじませる
  4. パスタをゆでる
  5. ゆで汁をフライパンに1お玉くらいいれて強火で乳化させる
  6. フライパンの火を止める
  7. パスタをフライパンに投入してソースとからませる
  8. 塩とエキストラヴァージンオリーブオイルを投入してからませる
  9. お皿に盛る。パスタは巻きながら高く積み上げると良いらしい。
  10. ブラックペッパーとエキストラヴァージンオリーブオイルを適量かける


ペペロンチーノに具材ちょい足しパスタは楽で美味しいです!

炎上に近づくと炎上が感染するらしい

日本代表とか日大とか炎上炎上な毎日ですが、炎上について。


この世界には、お腹が空いてる時に目の前に美味しそうなご飯があったら食べたくなるとか、かわいい女の子がいたら仲良くなりたいとか、そういったものと同類の生理的な強制力として、困っている人がいたらその原因となった悪い人を炎上させてこらしめたてたまらなくなっちゃう人達が、だいたい0.5%ほど存在している。


たとえばはてなブックマークとかでせっせとコメントしてる人達のように。


悪人に罰を与える仕組みは必要だが、悪人に罰を与えるっていうのは大変な仕事なのだ。ある事件で逮捕から判決に至るまで、たくさんの人間が膨大な時間をつかって証拠を集めてようやく有罪に出来るのだ。


しかしながらネットの世界では、困ってる人が見つかったら適当にストーリーをでっち上げてそれっぽい悪人を仕立て上げ、その悪人を断罪することによって生理的な満足感を得るというなかなか大変な人達が全体の0.5%程度存在しており、さらに困ったことにSNSなどのネットの仕組みの不備により彼らは多数派に見えてしまう。そして世の中には多数派のネガティブな意見に感化されてしまう人が多いので、炎上はバイオハザードのゾンビのように感染して広がっていき、さっきまで健康的だった人がこの0.5%の中に取り込まれてしまったりするのだ。


だから、この0.5%の人達とは徹底的に関わらない方がいいです。友達になってもロクなことにならないので。


同様の理由から、不倫とか相撲とかアメフト事件とかどうでもいいスキャンダルを延々と垂れ流すワイドショーなども見ない方がいいです。あれもほとんど洗脳と同じで、見ているうちにどうでもいいことがどうでもよくなくなってきてしまい、一緒になって炎上にハマって人生の大切な時間と健康を失うことになってしまうのです。



以上、メンタリストDaiGo先生から得た知識を盛り込んでみたバージョンでした。メンタリストDaiGo面白いのでおすすめです。

サッカー日本代表 ガーナ戦感想

衝撃の監督解任激から西野体制になっての初陣。ガーナ戦でした。感想を書きます。

全体的に

0-2と負けてしまいましたが、個人的には非常にポジティブな内容でした。連携不足な感は否めませんでしたが、やりたい形はそこそこ作れていたのではないかなと思います。特に大島が素晴らしくて、ハリルジャパンで今までくすぶっていた分、まさに躍動という感じでしたね。今日の攻撃の中心は大島でした。


大島以外にも、選手個々から工夫をしようという意図が感じられ、今日のような選手の自発的なプレーはハリル時代にはなかったものです。結果としては負けてしまいましたが、今日のサッカーは選手はやってて楽しかったんじゃないですかね。たった数日の準備で今日の出来なら選手も監督も手応えを掴んでるとおもいます。


とにかく今日は意地でもクリアしないスタイルだったので、ここまで真逆になるかとちょっと笑えました。これをやりたかった選手達に今までは「とにかくロングボールを蹴れ反論は受け付けない」とやらせてたのですから上手くいかないですよね。まあこれはハリルは悪くない。安易に招集した協会が悪い。あと良かったのが、だからといってショートパス一辺倒ではなく、特に前半は大迫狙った一発ロングパスも絡めてたところですね。ああいうのが大事です。


相手もかなり引いていたので決定機はあまり作れませんでしたが、基本的なサイドの攻略という点では何度もいい形が作れていました。特に遅攻からでもそれなりにサイドを攻略出来ていたのが非常にポジティブな要素です。本当は阿吽の呼吸のゴールパターンがあるといいのですが、こればっかりは短期間じゃどうにもならないですね。


DFは立ち上がり3バックの横をつかれ、その後にはサイドを警戒して原口長友が2人共に最終ラインに吸収されて中盤でプレスがかからなくなりぼろぼろでしたが、でも20分すぎたあたりから最終ライン4人、中盤5人のラインをちゃんと作れるようになって安定してきたんじゃないかなと思います。


チームとしてDFが決定的に崩されるシーンはなかったですが、個人のミスから2失点してしまったのがテストという意味ではもったいなかったですね。特に川島は2失点に直接絡んでるのでもうちょっと集中してほしい。あのコースにフリーキックを決められちゃだめです。槙野もあの位置であのファールは不必要でした。2失点目も長谷部がちゃんと競り合ってたので川島はあそこまでギリギリ勝負でいかなくても失点するようなシーンではなかったです。


ということで、試合前は3-6-1なんて大丈夫かいなと思っていたんですが、このまま続けてみても面白そうなので続けてみてほしいですね。もう4-3-3は飽きました。


これから半月みっちり合宿できますが、このチームは今の段階では何をやっても上昇すると思うので、着実に良くなっているという手応えをもって本番に望んでほしいですね。


選手評価

なんといっても今日の試合は大島僚太。とにかくあらゆるパスが気が利いてる。今日のパフォーマンスをこの先の合宿中も維持できればレギュラーでしょうね。完全に攻撃の中心でしたし、守備でも広範囲をカバーリングしていました。とにかく攻撃でも守備でも自分がやってやろうっていう強い意志がありました。素晴らしかった。間違いなくハリルがいなくなって一番恩恵を受けた選手ですね。ハリル時代は大島の頭の上をボールが飛び交ってましたから。


本田圭佑は及第点というか、ブラジル以来ずっとサイドやってましたが、やっぱりなんだかんだで彼が中盤にいると落ち着きますね。とてもよくボールに絡んでいましたし、本田が空けたスペースを大島が使うというコンビネーションもなかなかよかったです。


宇佐美は少し外に開きすぎていたかもしれません。今日のメンツだと宇佐美が得点に絡まないといけないので、外に開いてみるのも大事ですが、もう少しバイタルやエリア内で大島や本田からの縦パスを要求したほうがいいのかも。その点では香川のほうが良かったですが、やっぱり今の代表では宇佐美の突破力やシュート力は魅力です。大迫がつぶれて宇佐美が点をとるという形が作れるといい感じだと思います。ただクラブで右サイドで実績を作っての招集ですが、左サイドの時はサイドからドリブルで中に切り込んでミドルシュートのイメージが強すぎる感があるので、中央で相手にとって危険なスペースを攻略することが出来ないようなら香川や岡崎を使ったほうがいいですね。


長友は相変わらず神です。


原口は慣れない右サイドでしたが、本田大島とよくパス交換してサイドを攻略していました。立ち上がりは何度かサイドをやられましたが、途中からは守備も安定していました。


香川真司はメンバー外もあるかなと思ってたんですが、今日のパフォーマンスならメンバー入りは確実ではないかなと。4-4-2になってから消えてしまってましたが、3-6-1の時は良いチャンスメイクを何度もしていました。香川の場合は中盤でボールを受けたときにワンタッチで相手をかわせるかどうかがコンディションのバロメータなので、今日はちゃんと出来てたので状態は悪くなさそうです。


山口と柴崎はどちらがスタメンとるか分からないですね。バランス考えると山口なんですが、今日一時的に大島と柴崎が並んだ時のボールの回りの良さは異常でしたね。往年の長谷部遠藤を思い出します。


井手口はかなり厳しいですね。半年試合に出れてないのはきついか。


川島は2点とも止めてほしかった。ほかのキーパーが怪我してるのもありますが、後半中村見てみたかった。まあ次の試合で中村になるかもしれません。


槙野と吉田は2人共に身体能力お化けで俊足でもある上にボールの扱いも上手いので、3バックの両サイドという意味ではかなり適正がありそうです。

劇場版 リズと青い鳥の感想

リズと青い鳥観てきました。

liz-bluebird.com


僕はユーフォに関しては原作の大ファンでもあるので、若干うがった見方もしてしまうところもあるのですが、簡単に感想。

良かった点


山田監督のセンスが存分に発揮された世界観はやっぱり独特の美しさがありますね。まあこれは良し悪しで、本来の作品世界を山田監督が食ってしまうという面もあるけど、今回は劇中にメルヘンな絵本世界が出てきたりもするので、山田監督の演出はハマっていたように思います。


この映画の劇中劇であるリズと青い鳥という世界描写が素晴らしくさすが山田監督といったところでした。絵本世界と現実とを行ったり来たりする演出は絶妙でしたね。ここは原作よりも良かったように思います。


あと、原作では新入生が入ってきて登場人物が多くなりすぎているため、2年生編から読み始めるのはほとんど不可能なのですが、劇場版では主人公の黄前久美子を含めた無駄なキャラクターをばっさりカットして新3年生組+梨々花という最小構成にしたのが非常に良くて、初見に対してもわかりやすい作品に仕上がっていたと思います。



良くなかった点


心理描写は原作と比べるとかなり浅くなっています。たとえば、麗奈のみぞれに対する「本気だしてないんじゃないですか」っていう台詞は唐突感がぬぐえません。原作だと、これは麗奈の葛藤の末に絞り出された台詞なのです。また、これに伴ってみぞれがなぜ本気を出せていないのかという状況説明も浅くなってしまっているので、最大の見せ場であるオーボエソロシーンが軽くなってしまっていますね。


他にも、希美の「私を軽蔑するでしょ」っていう台詞もイマイチなんでなのかよく分からない感じですね。これは希美のみぞれに対する嫉妬心を見せるシーンが少なすぎるのが原因だと思います。原作だとかなり時間をかけて描いているところでした。


まあ希美とみぞれの心理描写については、原作だと黄前相談所の独壇場であり、黄前久美子が出てこないという劇場版の構成上では心理描写シーンを全てオリジナルで作り直す必要があったのがつらいところだったかもしれません。


あと、これは山田監督が作ると聞いて観る前から心配していたところで、実際観てみてまあやっぱりこうなるよねって思ったところなのですが、百合という方法論を用いて、希美とみぞれの関係を記号的に処理しようとしてしまっているところが、原作ファンとしてはもにょるところです。


原作でみぞれが希美に対して抱いている強烈な執着はなかなかよく分からない謎の感情なのですが、劇場版ではそれを恋愛感情にデフォルメしています。まあこれは良し悪しではあるのですが、百合という記号に落とした分だけストーリーが分かりやすくなっているのですが、原作の持つ人間関係の複雑さというか深みのようなものは消えてしまいますね。



ということで、劇場版観て面白かった方は、ぜひ原作も読んでみてください!きっと面白いんじゃないかと思います。

炎上はだめです

近頃は日大が大炎上しています。

まあたしかにあの監督はかなりやばい感じがしますし、みんなが彼に対して怒るのは無理はないでしょう。ただだからといって、みんなで特定個人をフルボッコにするのは本当よくないです。


これは今回の件に限らず炎上全般についてそう思います。炎上って、炎上が持つ暴力性に無自覚なままに加担している人が多いと思います。


たとえば日大の監督が世紀の大悪人だったとして、彼に犯罪性があった場合にどの程度の罰を与えるのかを決めてよいのは司法ですし、彼が悪人だからといってみんなが好き勝手殴ってよいわけではないというのは多くの人が理解しています。


しかし一方で、物理的に殴りはしないけどネット上で攻撃的な意見を公表するという人はとても多いです。それはなぜかというと、自分の意見というのは一見すると対象に対しての影響力が小さいからです。直接殴ると相手は怪我をするかもしれませんが、誹謗中傷を投げかけるというのは殴るのに比べれば影響力はかなり小さいですし、ましてや自分のSNSなどに個人の意見として投稿する分には相手が直接参照する可能性すらも小さいですし、せいぜいたまたま悪人の目に入って悪人が嫌な思いをして反省でもすりゃいいなってくらいのものです。


特定の人物への中傷を表明するというのは、20年前までであればこのようにほとんど影響力がなかったので自由にやってても別によかったと思います。


しかし現在は20年前とは状況が一変していて、インターネットが普及して個人の意見が可視化されるようになりました。この状態で以前と同じように個人個人が誰かを中傷する意見を自由に発信した場合、特定個人に対して多数の中傷が集中するという現象が起こります。また、人は多数派の意見に流されやすい生き物ですから、いったん中傷が集中し始めると指数関数的に中傷の数が増えていきます。そして、これはSNSの構造的な欠陥ですが、SNSではマジョリティの意見が上位に表示されるので、中傷の数がある規模に達するとこの世の全ての人間が中傷しているように見えてしまいます。


これが炎上ってやつです。


想像するまでもないですが、数万、数百万、あるいは数千万の人から中傷を浴びせられることのダメージは計り知れないものがありますし、実際に人生は大きく狂いますし、場合によってはそれで命を落とすこともあるでしょう。



今では不倫やらパワハラやらと悪人に対する炎上は日常的に起こってますが、ここには矛盾があります。


悪人を好き勝手殴ることはいけないことだとみんな理解しているにも関わらず、炎上というそれ以上の暴力を加えることには躊躇がないのです。みなさんの素人パンチではそこまで大した怪我にはならないですが、それでも皆いけないと思ってやらない。一方で人生崩壊する可能性もある炎上は平気でやるのです。



この矛盾の存在が、どのような場合であっても炎上自体が批判されるべきである理由です。


悪人を好き勝手殴ってもいいとみんなが思っているのであれば炎上は許容出来ます。しかしそうではなく、悪人だからといって殴ったりするのは良くないが炎上させるのはOKという論理破綻を抱えているのであれば、そこには炎上の暴力性に対する無自覚が存在し、意図せずして悪人に対して暴力をふるっているということになります。


悪人に対する私的な暴力が良くないという前提に立つのであれば、炎上の良し悪しについては議論する必要もありません。悪人を好き勝手殴るのが倫理的にNGな以上は、同じ論理で炎上もNGということになるのです。


だから、必要なのは炎上の暴力性に対する無自覚さを解消する教育なんだと思います。


まあ日大の件については他にも問題があって、相手が否認している以上はまだ悪人と決まったわけではないのです(特に初期段階では)。公平な裁きを下すためには当然否認している側の意見も聞き入れて事実確認をする必要があるのですが、それを「言い訳するな」で片付けてしまっているのは、感情だけで事実を決め打ちしてしまっていて本当によくないなと思いますね。



以上です。