【感想】マンガでわかるイスラムvsユダヤ / 古城 武司・吉村 作治

先日読んだ群集心理の漫画版が面白かったので、マンガで分かる的なものをいろいろ読んでみようという事で、この本を読んだ。面白かった。

マンガでわかるイスラムvs.ユダヤ 中東3000年の歴史

マンガでわかるイスラムvs.ユダヤ 中東3000年の歴史


この本は大きく分けて中世以前までと現代以降との2部構成のような感じになっている。ちょうど湾岸戦争の時に初版が出たのもあってか、20世紀の中東を描いた現代パートがとても充実していて、なんで今の中東があんなに混迷を極めているかがよくまとまっている。


アラブの国々の中心に、(アラブ人を追い出す形で)ユダヤ人のイスラエルが建国され、さらに先進諸国の石油の利権争いが加わって、泥沼になっている。


この本にはアラブの春を経由して中東が混迷を深めた2015年にあとがきが加筆されている。それによると、イスラム教では世襲に対するこだわりが非常に強いので民衆の革命による改革は不可能だろうとのことだ。なにせいまだにシーア派スンニ派とに分かれて1000年以上前の後継者選びで揉めているのだから、SNSとかでアラブの春とかやってみても、とてもじゃないが変えられるものではなかった。あの土地では体制を維持したまま社会を安定させるしかないだろうとのことだ。なるほど。


中東では旧約聖書の時代からかれこれもう3000年も争いを続けている。神様がエジプトで暮らしていたユダヤ人にカナン(現代のイスラエル/パレスチナのあたり)の土地を与えたのが発端になり、もともとそこに暮らしていたアラブ系の人達との間で、土地を奪い奪われを繰り返している。


おそらくこれからも当分あの土地が落ち着くことはないのだろう。彼らにとってあの地をめぐった戦いは聖戦であり、正義そのものであり、また、先進国にとってもあの地の石油利権は非常に重要だ。


人類は未だに、エデンの園を追放されて地上をさまよってるだけなのだろう。