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初音ミクで遊ぶ時のミックス・マスタリング沼について

ボカロ曲作る時にミックスとかマスタリングの工程に入るとTwitterでつらいしかつぶやかなくなる程度に苦手です。でもたぶんやったことない人にこの沼模様があまり伝わらないような気がするので、その沼具合を書いてみることにしました。

ミックス・マスタリングとは

そもそもミックスやマスタリングとは何なのかですが。

ミックス

ほとんどの曲ではボーカル/ギター/ベース/ドラムなどの複数のパートが同時に鳴ることによって曲が出来上がっています。

この時に、これらの音はただ同時になっているのではなく、特に各パートの

  • 音量
  • 定位(ステレオだと左右で音がなる位置)

を調整することによって、聞きやすいように鳴らしています。

例えば、ギターの音量がボーカルの2倍の大きさで鳴っていたらもはや何を歌っているのかわからなくなってしまうので、ボーカルが一番目立つようにオケの音量を調整します。また、全てのパートを中央で鳴らすと音が団子状態になってぐちゃぐちゃになってしまうため、各パートがなるべくクリアに聞こえるように各パートを左右に振ります。ヘッドホンやイヤホンで聴いたことがあれば、だいたいボーカルベースドラムが中央にいて、その他のパートが左右から鳴っていることが多いのは知っていると思います。


また、各パートに対して加工を加えて聞きやすくする処理も行います。その処理を行うためのエフェクターとしては、

  • イコライザー(周波数ごとに音量を増減するやつ)
  • コンプレッサー(ある一定の音量に達した時に音を圧縮して音量を小さくするやつ)
  • バーブ(残響音をかけるやつ)

の3つが代表的なものかと思います。


これらを駆使しながら全てのパートが同時に鳴った時に音楽として聞きやすいように調整するのが、ミックスという作業です。


マスタリング

ミックスによって出来上がった曲は、ミックスした人やその時の気分によって仕上がりがマチマチです。ある1つの曲だけを聴くのであれば特に問題ないのですが、実際に音楽を聴く際はアルバムやプレイリストなどのように次々に違う曲を聴いていくことが多いです。この時に、たとえば1曲目に比べて2曲目の音量が2倍になっていたら、曲が変わるたびにプレイヤーの音量を調整しなければ聴いていられません。

そういったことにならないように、曲の音量や質感がなるべく一定になるように調整する作業がマスタリングです。また、アルバムなどを作らずに曲単体で仕上げる時などでも、例えばニコニコ動画に上げるのであれば他の人がアップしている曲となるべく音量などが合うようにしておかないと、視聴者に負担がかかってしまうため、マスタリングは必須の工程になります。


これの何が沼なのか

ハマりポイントを2つほど

音圧かせぐの大変

先にも述べましたが、音楽を聴く際にその曲単体で聴くということはあまりなく、基本的にはいろいろな曲を連続的に聴くことになります。ここでポイントなのが視聴者は連続して聴いている時に曲によって適切にボリュームを変えてはくれないということです。一方で、映画館などで映画をみたりライブに行ったりすると感じると思いますが、基本的に音量は大きい方が音に迫力を感じテンションが上がります。2つの曲を連続して聴いた時には、相対的に音量の大きい方が迫力があるかっこいい感じに聴こえます。

そのため曲を作る時は音量をなるべく大きくした方が有利になることが多く、それだけなら話は簡単で、マスタリングの工程で音量をなるべく大きくしてあげればいいだけです。
ところが、この話はもっと複雑化していきます。デジタルオーディオデータというのはある一定の音量(0dbという)を超えると処理できなくなり音割れしてしまうので、音量を上げていくとこれ以上大きくできないポイントに到達します。
そこで音量に代わって表れるのが音圧という考え方です。音圧というのは音量感と言っていいと思います。音量がMAXに到達している状態から、さらに音量感をプラスしてくことで、他の曲と比べて迫力ある音に聴かせることができます。


この音量感をプラスするためには色々な方法が考えられています。


①音量が大きい時間を長くする

曲というのは時間軸で見ると常に最大音量で鳴っているわけではありません。オーディオの波形データをみたことがある人なら、波形がジグザグしているのを知っているかと思います。たとえばAメロからサビに移動して色々な楽器が同時に鳴り出すと音量は増します。また、ドラムのキック音(バスドラム)はかなり大きめに設定されていることが多いので、キックが鳴っている時だけ音量が飛び抜けて大きくなります。

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オーディオデータは音量が0dbを超えると音割れしてしまうため、曲の中で一番大きい音量になっているところが0dbを超えないようにしないとなりません。すると必然的に、他のところの音量は0dbよりも小さくなります。

そこで活躍するのが先に述べたコンプレッサーというエフェクターです。コンプレッサーは音量が一定以上になった時に発動し、音を圧縮して音量を小さくしてくれます。最大音量(ピーク)になっているところにコンプレッサーがかかるようにすることで、曲のピーク時の音量が下がり0dbから遠ざかるので、その分だけ全体の音量を上げることができます。するとまた、次のピークポイントが出てくるので、またそこにコンプレッサーがかかるようにして・・・、という感じで徐々に全体の音量を上げていくことによって、全体的に音量が大きくなり、音量感をプラスすることが出来ます。


しかしこれはいい話ばかりではありません。ピーク音量を潰して全体の音量を上げていくということをやっていくと、もともとピーク時によく鳴っていた楽器のアタック音が失われていくということなので、全体的に躍動感のないのっぺりしたように聴こえる曲になってしまいます。また、音を潰したりしているため、ミックスの時に調整したはずの音量バランスがどんどん崩れていったりします。

曲のバランスや躍動感が失われないようにうまく調整しながらピーク音量を潰して全体のボリュームを上げていくのが、なかなか難しいのです。



②低音域と高音域を強調する

人間の耳は耳がいい人でだいたい40Hzあたりから20000Hzあたりまでの音域が聴こえます。

この音域を大雑把にカテゴライズすると、
0〜200Hz:低音域
200〜4000Hz:中音域
4000〜20000Hz:高音域
という感じになります。


これらの音域のうち、中音域は自然界にたくさん存在している音なので聞いていると心地よく、低音域と高音域は聞いていると聴感上の不快度が高いです。しかし逆に考えれば、不快に聴こえるということは少し鳴っているだけでも聴感上耳に引っかかるということなので、同じ音量で鳴っている音でも低音と高音が強調されている方が音が大きく聴こえます。

音量の上限は0dbと決まっているためそれ以上大きくできませんが、イコライザーを使って中音域と削って、その分だけ低音と高音のボリュームを大きくすることで同じ音量でも大きく聴こえます。


しかしこれもやっぱりいいことばかりではなく、不快な音を足しているわけですから聴いていて不快にならないように気をつけなければいけません。また、中音域というのは良い音として聴こえるためには非常に重要な音域なので、これを削ってしまうことによってせっかく良い音で鳴っていたはずの声や楽器の音色を壊してしまうことにも気をつけなければなりません。

そのため、楽器の音色の良さをなるべく殺さないようにしながら、低音域と高音域が大きくなるように調整する必要があり、なかなか難しいのです。

という感じで、音圧を稼いでいく作業がなかなか難しいのですが、今となってはどの曲もこういった処理をしているため、自分で曲を作る時も音圧でなるべく負けないようにしないと、曲の良し悪し以前に音量感による聴感上の問題でダメな曲にとして認識されてしまうのです。



音のバランス

ミックス段階での難問になります。ミックスは上述した通り各パートの音量と定位を調整する工程ですが、これがとても難しいのです。

人の耳は40Hzあたりから20000Hzくらいまで聴こえます。各パートを同時に鳴らしていくと、各パートで鳴っている音域がかぶります。例えばいろいろな楽器が500Hzあたりでよく鳴っているという状態をそのままにしておくと、500Hz付近だけ異様に音量が大きいという状態になり、これも聴感上あまり心地よくありません。また、同じ音域で鳴っている複数の音は聞き分けが難しく、ごちゃごちゃしているように聴こえてしまいます。

そのため、各パートごとにイコライザーで音域ごとのボリュームを調整して、なるべく各パートが異なる音域で鳴っているという状態を作ると、すっきりとしたクリアに聴こえる曲になります。

しかしこれも良いことばかりではなく、イコライザーで音域毎にボリュームを変えていくということは楽器本来の音色を変えてしまうということなのです。そのためなるべく音色を殺さないようしながら慎重にイコライジングしていく必要があります。

さらに、上述したマスタリング工程での音圧を稼ぐ作業を行うとせっかく整えた音のバランスが崩壊してしまうことがよくあります。そしたらまたここに出戻って調整し直しです。

また、人の耳は完璧なものではないので、体調や疲労によって高音域が聴こえなくなったりします。また、スピーカーやヘッドホンにもいろいろなものがあり、それぞれ同じ音ではなりません。今日良いバランスになったと思ったミックスが、次の日に聞いたら高音がで過ぎていたり、スピーカーを変えてみたらぐちゃぐちゃになった、ということは日常茶飯事な感じなのです。




ざっくりですが、以上のようなことが非常に難しく、人々は今日もミックスマスタリング沼にハマっていくのです。ちゃんと訓練した人は、これらの作業をサクッと高品質に決めてしまうことができるみたいなので、本当すごいなぁっていつも思います。そうなれる日はくるのだろうか・・・!