hydeがすごい
昔からラルクアンシエルのファンなのだけれど、近年はそのボーカルのhydeがソロ活動を積極的にしている。
それで今日は最新のライブビデオAnti Wireが発売されたので観てたのだけど、ほんとにこの人はすごいなという感想しかないので、ちょっと書いてみる。モンスターバンドであるあのラルクアンシエルでさえも、hydeにとっては小さな器なのだ。
hydeは2017年末にVAMPSを休止してからソロのライブを積極的に行っていて、僕も色々と縁があってそのうちのいくつかに足を運んだ。その期間で3つのライブビデオが発売されてるのだが、そのどれもがとてもクオリティが高いので、それらを紹介していく形にする。まとめは特にない。
HYDE ACOUSTIC CONCERT 2019 黑ミサ BIRTHDAY
黑ミサはHydeが長年続けている年に1度のオーケストラを率いたアコースティックライブ。2019年は50歳の節目ということもあって、Hydeの誕生日にライブが出身地和歌山で開催され、その模様が初めて映像化されたもの。
HYDE ACOUSTIC CONCERT 2019 黑ミサ BIRTHDAY -WAKAYAMA-(初回限定盤)[Blu-ray]
- 発売日: 2020/01/29
- メディア: Blu-ray
このライブはソロだけでなくてラルクやVAMPSの曲など関わってきた様々な曲を演奏している。演奏される曲にはhico氏によってスーパーなオーケストラアレンジが施されていて、どの曲もすごくいいアレンジになって全部クライマックスという曲が並んでいる。
そしてなんといっても一番に目を引くのがhydeの歌唱力の高さ。hydeの歌はラルクのイメージが強いけど、実は2000年代までと2010年以降とで歌い方が全く違う。昔は若さにまかせたアマチュアな歌い方をしてたのだけど、それが30代後半になって身体能力の衰えから出来なくなってきた。おそらくそこで本格的に発声の研究を始めたのだと思う。その結果、今50代になったhydeは20代の頃よりぜんぜんハイトーンも出せるしピッチもニュアンスも自由自在という、スーパーな歌い手になった。
僕は好きでYoutubeの音楽レッスンの動画をよく観るのだけど、そこでボーカルのレッスンをしてる人が紅白に出たhydeをたまたま見て、こりゃ発声オタクの歌い方だと感じたのだそうだ。
そんなわけで、この黑ミサライブはhydeの歌に聴き入るためのライブビデオである。ラルクの有名な曲もたくさんやってるので、昔のラルクファンが観ても楽しめる内容である。
Anti Final
Antiはhydeがソロになってから発売したアルバムとそのツアータイトルであり、このライブビデオはそのツアーファイナルの模様を収録したものだ。
HYDE LIVE 2019 ANTI FINAL(初回限定盤)[Blu-ray]
- 発売日: 2020/07/29
- メディア: Blu-ray
Antiはhydeの中心的な活動である。音楽性としてはVAMPSの延長線上のラウドロックの方向性になるが、Antiでは海外のComposerを積極的に採用して、より新しくて盛り上がるロックを追求している。このAntiはとにかくライブが激しくて、hydeも観客にダイブしたりとやりたい放題である。
VAMPSを止めて始めたAntiは、hyde自身のロックの集大成となるプロジェクトだ。「体が動くあと数年でやり切る」と本人も語っていて、Antiのアルバムをひっさげてツアー車でアメリカのライブハウスを巡る過酷なツアーも行っていた。
また、このAntiツアーにはロックに慣れていない日本のオーディエンスを育てるという意図もあった。ライブビデオになっているAnti FinalはそんなAntiツアーの集大成であり、ステージ上のパフォーマンスだけでなく、オーディエンスがどれほど盛り上がれるかというのも試されるライブだった。結果として、非常にカオスなライブに仕上がっており、hyde自身もこの映像を作れてよかったと語っている。
Anti Wire
Anti Final以降もロック道の集大成を突き進んでいたhydeだが、コロナ禍の影響であらゆるライブ活動が中断してしまう。活動に対して厳しい制約を受ける中でなんとか開催したライブがこのAnti Wireである。
HYDE LIVE 2020-2021 ANTI WIRE (初回限定盤)(2枚組)[Blu-Ray]
- 発売日: 2021/05/26
- メディア: Blu-ray
ライブ開催の制約として、観客同士のソーシャルディスタンスを保つこと、発声しないことがある。この制約はhydeのやっている音楽の方向性からすると致命的であった。そんな中で考え出されたのがAntiの曲を中心としたアコースティックライブである。クリエイティビティは制約がもたらすという話はよくあるものだけど、このライブはまさにコロナ禍という制約がもたらした作品である。
アコースティックライブといっても、黑ミサのようなオーケストラを導入した華やかなコンサートではなく、アコギ/ベース/ピアノ/ドラムというミニマムなバンド構成で、まるで荒廃した街の路上で演奏してるかのようなライブになっている。これがとてもかっこいい。
前述のAnti Finalと見比べると、ほんの1年前までもみくちゃなライブをしていた曲たちが発声禁止でスタンディング禁止という静かな空間の中で演奏されていて、得も言われぬ感傷をおぼえる。しかしだからこそhydeの歌唱力は非常に際立つものがある。また、コーラスの歌詞を口が開かない「ん」にして客に歌わせてみたり、観客がストンプ(足踏み)してどんどんとリズムをとることが定番の曲を採用したりと、制約の中でも楽しめるような様々な工夫が用意されていて、非常に良いライブになっている。