終わりなき日常の終わり たまこラブストーリーの感想

ようやく、たまこラブストーリー見てきたので感想を書きます。

感想

すごく面白かったです。期待通り、いや期待以上に。

良かった点をつらつら書くと
・話の本筋、たまこのラブストーリーが王道な感じでよかった。
・たまこというキャラクターは本当に魅力的。
・たまこのお母さんが初登場(?)したけど、「たまこ姫」と言ってあやしている姿は本当に良いお母さんで、子供の頃に母親に甘えてる時の間隔なんかをすこし思い出した。
・たまこがもち蔵にラブになっていく際の素敵エピソードが、設定を上手くいかして無理なくもち蔵かっこいい。病院での一幕はちょっとやり過ぎ感あったけれどw
・ギャグ要素も非常にいい塩梅で、観客でくすくす笑っている人がたくさんいた。
・みどり、かんな、しおりの同級生達の物語への絡み方も非常にほどよい。(といっても、みどりちゃんはこの映画では特別な存在だけれど)

という感じで、ラブコメ映画としてとってもよく出来ていたのです。



さて、もともと僕はたまこまーけっとをdisりまくっていたのですが、この『たまこラブストーリー』で180度方向転換です! たまこま最高ですね!!もちろんこの映画の元の作品『たまこまーけっと』も見ていて、全体的にはわりと好きだったのですが、どうしても最終回の結末が納得いかなかったのです。

たまこまーけっとに感じたやるせなさと、たまこラブストーリーをなんでこんな大絶賛なのか説明するためには、まずたまこまーけっとの背景から考える必要があります。

たまこまーけっと』登場までの流れ

ゼロ年代後半は京都アニメーションの黄金時代でした。社会現象にもなった「涼宮ハルヒの憂鬱」、ニコニコ動画との抜群の相性で一世を風靡した「らき☆すた」「けいおん!」など、圧倒的な作画のクオリティやネットスラングを上手く取り入れる手法で、年々を代表するアニメをコンスタントに創出していたお化けみたいな製作会社でした。特に、「らき☆すた」「けいおん!」「けいおん!!」をたてつづけにヒットさせたことで、「京アニの日常系」という絶対的なブランドを確立させました。

また、ゼロ年代後半は京アニ以外にもたくさんの日常系作品が作られていて、まさに日常系全盛期だったわけです。

ところが、10年代に入ると東日本大震災が起こり、あまりにも厳しい現実を見せつけられたアニメ批評界隈では「日常系の終わり」がささやかれるようになりました。まぁこの説には賛否両論あったのですが、現在から見るとこの指摘は現実のものになっていて、2011年を堺に日常系はゼロ年代の勢いを失っていきます。

そんな2011年、京都アニメーションは大々的な広告をうち、満を持して次なる日常系作品『日常』を発表します。この頃までの京都アニメーションブランドの力はとにかくすさまじかったので、多くの人が2011年の代表作はこの『日常』になると考えていました。そして、失敗します。もちろんそれなりに人気のある作品ではあったのですが、「らき☆すた」や「けいおん!」のようなメガヒットにはなりませんでした。結局、2011年のアニメの代表作は『魔法少女まどか☆マギカ』になります。

これにより京都アニメーションのブランド力は、それまでの圧倒的なものではなくなります。その後も、「氷菓」や「中二病でも恋がしたい!」などの人気作品を創出していきますが、ゼロ年代のようなメガヒットには至りません。

そんな中で、2013年冬アニメで放映されたのがこの『たまこまーけっと』なわけです。この作品は「けいおん!」「けいおん!!」をヒットさせ、圧倒的な力を持っていた「日常系の京アニ」ブランドの中心人物だった山田尚子/吉田玲子/堀口悠紀子が集結して、原作なしの完全オリジナルで再び京都アニメーションが日常系にチャレンジするという作品でした。

そして、『たまこまーけっと』は非常にクオリティの高い作品となりましたが、やはり大ヒットに至りませんでした。ちなみに、この年の代表作が「進撃の巨人」という日常系とは真逆の「戦争」状態を描いたものだったことからも、日常系作品の厳しさが分かります。


日常系の枠に縛られた『たまこまーけっと

さて、そんなたまこまーけっとですが、数話見ていくと今までの日常系ではあり得なかったキャラクターが存在していることが分かります。それが、「もち蔵」と「みどり」でした。この2人はたまこに恋しているというキャラクターなのですが、それまでの日常系に存在していたそれとは違って、かなりガチな感じです。この2人はたまこと友達でいることに辛さを感じていることが描かれているので、友達でいることから脱却しようと考えているキャラクターです。

つまり、この2人は日常系アニメたまこまーけっとで描かれている日常を破壊したいという願望を心の奥に持った存在なのです。

僕は、京アニの日常系アニメをもう一度という雰囲気で登場した『たまこまーけっと』にこの2人のキャラクターをあえて登場させた事が本当に素晴らしいと思いました。楽園だけを描く日常系が衰退していく中で、新しい形の日常系というものをあの京都アニメーションがチャレンジするのかと心躍らせました。

特に、「みどり」というキャラクターは本当によく出来ていて、日常系アニメに欠かせない主人公の親友という役割をこなしながらも、たまこへの恋心やもち蔵への嫉妬なども併せ持つという複雑なキャラクターで、みどりがこの物語をどういう方向に導いていくのかとても楽しみでした。


ところが、この期待は完全に裏切られてしまいます。端的に言えば、『たまこまーけっと』という作品の結論は「やっぱり日常系いいよね」っていうことで、日常への破壊願望を持ったこの2人のキャラクターは最終的に完全に黙殺されてしまうのです。

僕はこれがどうしても許せなくて、特にみどりの扱いがひどくて、たまこが「これからも今まで通りみんなで友達でいるのが一番いいよね」という感じで物語を締めて、なんとなく「めでたしめでたし」な雰囲気で『たまこまーけっと』は終わっていくのです。

いやちょっと待ってくれよと。みどりはどうなっちゃってるんだという話です。この最終回観た時に「好きな相手に告白すらさせてくれない日常系こわい」というようなことをツイートしたのですが、本当にそんな感じです。



日常を自ら終わらせた『たまこラブストーリー

ひどい作品だったという感想が残った『たまこまーけっと』でしたが、最終回の後しばらく経つと続編が作られるという噂が聞こえてきます。


どうやら劇場版らしい。ふむふむ。


どうやら「たまこラブストーリー」というタイトルらしい ・・・ふぁっ!?


もうこのタイトルだけでわかります。上でつらつら書いていたような僕のたまこまーけっとへの不満を全て吹き飛ばす作品であることが。
そして、本当に素晴らしい作品でした。

象徴的なのは、作品中でもち蔵が「やっぱりなかったことにしよう」と今まで通りに戻ることを提案し、「今まで通りは嫌だ」とたまこが拒否するところです。これは『たまこまーけっと』へのものすごい自己批判になっていて、「今まで通りが一番さ」というテレビ版最終回からここまで来たのはどうなってるんだという感じはしますねw

特に、インタビューとかを見ている限り、どうやらもともと『たまこラブストーリー』の構想があったわけではないようなので、この方向転換は実に不思議です。



まとめ

上記のように、僕の場合は最低評価から最高評価にジャンプアップというのもありますが、とにかく面白かったです。

Blu-rayかっちゃおっかな!