ギターのスケールというものの考え方
ギターを始めるとある段階で誰しもが出会う「スケール」というものがある。メジャーとかマイナーとか、音階の種類のことで、ギターもある段階まで来ると色々なスケールを弾けるようになろうというものが始まるのだ。
ところが当時の僕はとにかくもうこれの意味が分からなかった。たぶん順序としてギターと同時に作曲も始めてたのが影響している。
例えば、
「Dマイナーコードの上では、DマイナースケールまたはDドリアンスケールが弾けて、マイナースケールだと暗い響きになって・・・」
という話がとてもよく出てくるのだが、もう何が何だかちんぷんかんぷんだったのだ。
というのも、「Dマイナーコードの上ではDマイナースケールあるいはDドリアンスケールが弾ける」なんてことはなくて、あるDマイナーコードの上で弾けるスケールはその前後のコード進行(つまりキー)によって一意に決まるのだ。ギターよりもむしろ作曲の方に熱心だった当時の僕はそれを知っていたので、その後出会ったギターの教則に出てくるスケールの説明が何を言ってるのか分からなかったのである。
でも最近改めてギターの勉強をしているうちに、そこがなんとなく整理されてきた。
まず「このスケールが弾ける」というところについては「たくさんあるDスケールのうちのどれか1つが弾くことが可能」という意味で捉えるのがいいだろう。全てのDスケールを覚えていれば、たしかにそのうちのどれか1つは弾ける。
次に「Dマイナースケールを弾くと明るくなって、Dドリアンスケールを弾くと哀愁感が出る」というスケールの響きについての話だが、これは結果的にそうなるという感じで捉えるのがいいだろう。基本的にはスケールはコード進行によって決められるものであり、演者がコードの上で自由に曲調を選択するために使うものではない。(コード進行の解釈の仕方という面白そうな話はあるが)
くらいで捉えると、個人的にはだいぶすっきりする。
もう1つ重要なことが、現代ギターのルーツがポップスでもロックでもなくブルースにあるというところだ。そのため教則本に出てくるようなギターの基礎的な理論には大いにブルースの要素が含まれている。
ところがこのブルースというのは現代のロックやポップスとは少し様子が違う。今の音楽はコード進行の妙で曲調を出していくことが多いが、ブルースではコード進行が決まっていて、その決まったコード進行上でいかにかっこいい演奏が出来るかという音楽なのである。おまけにブルースのコード進行ではコードの種類もだいたい3つしか出てこない。
決まったシンプルなコード進行の上でいかにかっこいい演奏をするかというブルースの話の上では、「Dマイナーコードの上では、Dマイナースケール、またはDドリアンスケールが弾けて、マイナースケールだと暗い響きになって・・・」というスケールについての説明の仕方はずいぶんしっくりくる。コード進行で差異が作れない分、スケールで違いを作るのである。ジャズではさらにスケールの自由さが許容されているように思う。
だからギターの教則本とかでのスケールの説明の仕方はああいう感じになっているのだろうと思う。